モーターホームのサブバッテリーシステム(電源システム)について考えてみた。
現在のところ、モーターホームのサブバッテリーシステムとして最も進んでいるのは、EcoFlow社の「エコフローパワーシステム」であろう。2022年9月に発売開始し、どの程度売れているのかは不明だが、VANTECH社にも採用されて「ILiS」という名称で販売されている。
従来のサブバッテリーシステムは、下図左側のようにMPPTソーラー充電コントローラー、走行充電器、DCDCコンバーター、DCACインバーター等の機器を相性を考慮しつつそれぞれ設置して、適切な仕様のケーブルを選定して配線する必要があった。それに対して「エコフローパワーシステム」は、下図右側のように「パワーハブ」を中心にモジュール化された機器を専用のケーブルで接続するだけでサブバッテリーシステムが構築できるというものだ。機器同士の相性の問題が無くなると共に、複雑な配線の代わりにコネクタ接続で済ませられるメリットがある。
システムの中心となる「パワーハブ」とは以下のような機器で、MPPTソーラー充電コントローラー、走行充電器、DCDCコンバーター、DCACインバーター等が集約されたユニットとなっている。
バッテリーユニットはパワーシステム専用LFPバッテリーで、以下のような形をしており、48V仕様で2kWと5kWがある。「パワーハブ」に最大3台まで接続することが出来る為、2kW~15kWの容量を選ぶことが出来る。また、3台まで縦にスタックすることが可能なスペックになっているので、設置面積を小さくできるそうだ。
簡単に監視と操作が出来る「専用タッチパネルモニター」と最大6つのAC回路と12のDC回路を接続可能な「専用スマート分電盤」がある。
この「専用スマート分電盤」が秀逸で、ブレーカー付の6つのAC回路とヒューズ付の12個のDC回路を接続可能になっている。しかも、ネジ止め式ではないので車載したとしても振動による緩みの心配が無いのが良い。
「エコフローパワーシステム」の主要スペックは下記の通りで、それぞれ十分な容量となっている。特にDC出力が最大1000Wになっているのは珍しい高スペックだ。
AC出力 | 定格3000W |
DC出力 | 13.6V/70A、最大1000W |
ソーラー充電入力 | 15-150V/30A、最大1600W x 3 |
オルタネーター充電入力 | 13V-60V,60A:最大1000W |
「EcoFlowパワーシステム」は従来の12Vシステムではなく、48Vシステムを採用しているので、専用LFPバッテリーも48V仕様となっている。48Vシステムは12Vシステムと比較して、電流値が4分の1となり電力損失は16分の1となり効率が高いメリットがある。電流が低下する為、接続用の電線を細くできるというメリットもある。
この様にメリットが多い製品ではあるのだが、実際に採用するとなると、気になることが出てくる。それは、長所の裏返しがそのまま短所になるということで、キャンピングカーのサブバッテリーとしては特殊仕様となる48Vシステムの採用と「EcoFlowパワーシステム」専用となることによる囲い込みと「パワーハブ」への機能の集中が心配になってくる。
今までのキャンピングカー旅の経験から、機器の故障や不具合が避けられないだろう。「パワーハブ」へ機能が集中しているので、一部だけが故障したとしてもユニット全体を修理に出す必要が出てきそうだ。「パワーハブ」全体の交換となることもありそうだ。システム全体の可用性が低くなってしまうのではないだろうか。旅先で故障した時には、全体が使用不可になるのではなく、縮退運転が出来るシステムの方が良いのではないかと思う。EcoFlow社は日本の企業ではないので、突然の仕様変更や保守の不徹底、製品シリーズの突然の廃止などについても心配だ。「パワーハブ」をすぐに入手できるのかどうかを確認してみると、公式のサイトやAmazonでも『現在在庫切れです』となっている。4月以降で予約を取っているサイトもあったが入手が難しそうだった。
そこで、「パワーシステム」の代わりに汎用品である「DELTA Pro 3」を使うのはどうだろうか。これは災害時や省エネ目的の家庭用蓄電池との位置付けであり、DC出力の容量が不十分で、分電盤が無い、オルタネーターチャージャーが内蔵されていない等のデメリットがあるが、標準的な仕様であり、故障した最にはもう少し低スペックな「DELTA 2 MAX」や「DELTA 3 PLUS」、いざとなれば他社のポタ電に置き換えても運用が出来るので安心できると思う。
「DELTA Pro 3」の基本スペック以下のようになっており、確かに「パワーシステム」と比較すれば非力であるのは確かだ。家庭用バックアップ電源ということを謳っているだけあって、AC出力容量は大きいもののDC出力容量が小さくなっている。
パワーシステム | DELTA Pro 3 | |
AC出力 | 定格3000W | 3,600W |
DC出力 | 最大1000W | 最大378W |
ソーラー充電入力 | 最大1600W x 3 | 最大1600W+1000W |
オルタネーター充電入力 | 最大1000W | 無し |
本体の充電容量は4kWで、専用エクストラバッテリーを接続することにより4kW~12kWの容量を選ぶことが出来る。
裏側のコネクターはこの様になっていて、左上はお馴染みの仕様だ。「15」のコネクターは自動車の高速充電器から充電する際に使用する。「16」のコネクターに「DELTA Pro専用 XT150変換アダプター」を付けることで、「EcoFlow 800W Alternator Charger」を接続することができるそうだ。これは面倒なので、「11」「12」のソーラー充電用ポートを使って、「BLUETTI Charger 1 (560W)」で走行充電する方が良いかもしれない。
問題なのはDC出力だ。本体側面にDC出力があり、「9」がDC5521 ポートとアンダーソンポートなのだが、最大378Wしか容量がないので、明らかに12V仕様のエアコンは稼働できない。従って、エアコンは100V家庭用エアコンにしなければならなくなる。DC12Vで稼働させるのはLED照明(2~300W)、冷蔵庫(340W)、FFヒータ(150W)、クレサナ(264W)、マックスファン(49Wx2)が想定されるので、スイッチング電源(ACDCコンバーター)を何個か別途設置することが必要になるだろう。
これ以外にも、分電盤を自作しなければならない手間も増えてしまう。「パワーシステム」の「専用スマート分電盤」だけ購入出来たら理想なのだが。
蓄電容量を4kWに合わせて、オルタネータ充電仕様も合わせて、コスト比較を概算でやってみる。
パワーシステム(4kW) | ¥792,000 |
DELTA Pro 3 + Alternator Chargerセット | ¥344,850 |
ざっくりとした比較ではあるが、専用と汎用でこのくらいの差が出ることは理解できる。可換性と入手性の方がより重要なのだが、結構価格差も大きい。スイッチング電源(ACDCコンバーター)と分電盤の件があり手間が掛かるデメリットとの天秤ではあるが悩む。